「選日(せんじつ・せんにち)」とは「歴注(れきちゅう)」のひとつです。
「歴注」とはわかりやすく言い換えれば「お日柄(ひがら)」のことで、カレンダーや暦(こよみ)などに見かける「大安(たいあん・だいあん)」や「仏滅(ぶつめつ)」などもそのひとつです。
「大安」「仏滅」の他に「先勝(せんしょう・さきがち)」「友引(ともびき)」「先負(せんぷ・さきまけ)」「赤口(しゃっこう・しゃっく)」の四つを加えて「六曜(ろくよう・りくよう)」または「六輝(ろっき)」と言い、「歴注」の中でもよく知られています。
「六曜」は広く暮らしの中に溶けこんでおり、特に結婚式やお葬式などの日取りを決めるときに気にされることが多いです。
「歴注」には「六曜」以外にもおなじみの「干支(えと)」の他に、「九星」「十二直(中段)」「二十四節気」「歴中下段」等があります。そして「選日」は「歴注」の中の他のどの分類にも分けられないもので、「撰日」「雑注」とも書かれます。
挙式をするなら「選日」を知っておいた方がいいワケ
冠婚葬祭、開業、建築など何かをなそうとするときに「六曜」の「大安」や「仏滅」をカレンダーなどでチェックする方は少なくありません。
ですが、吉日である「大安」のポジティブパワーを打ち負かしてしまうほどのネガティブパワーの日が「選日」の中にある事はあまり知られていません。
その「選日」の名は「不成就日(ふじょうじゅにち)」です。
なんともいい感じのしないその名前の通り、この日は「選日」の中でも何をするにしても良い結果が出ない縁起の悪い日なのです。
「大安」の日にこの「不成就日」が重なると、なんと「大安」の良い働きが「不成就日」の何をやってもうまくいかないネガティブパワーに抑え込まれてしまうとされています。
式を挙げたあとになってその事を知ったときに、ショックを受けるほどではないにしろ、なんとなく気になったり、少しいやな気持ちになる人はいるのではないでしょうか。
ですが、実は「選日」にはそれとは逆に「仏滅」のネガティブパワーを打ち消す日もあるのです。
「仏滅」ですら吉日とすることのできるその「選日」は、「天赦日(てんしゃにち・てんしゃび)」と言います。
「天赦日」はその名の通り「天の赦し(ゆるし)」によりこの世の全ての罪が許される日であり、「六曜」の「大安」以上の吉日とも言われており、この日に始めたことはどんなことでもうまくいくとされています。
この様なことから、あえて結婚式は「仏滅」に挙げたという方も最近では珍しくないですネ。
その理由として「仏滅」の結婚式は挙げる人が少ないので・・・
・特別割引がある
・日取りの調整がしやすい
・当日ゆったりとした式会場のムードで進行できる
などのメリットが考えられます。
後は来賓の方々が「お日柄」を気にされるかどうかです。
「六曜」「選日」のよくある用いられ方
ここまで結婚式にまつわる「六曜」「選日」についての話を書いてまいりましたが、「選日」などを含む「歴注」は中国から日本に伝わってきてから、日本の文化に溶け込み中国以上に広くいろんな場面に取り入れられるようになっていきました。
「六曜」の吉日と言えばなんといってもご存じ「大安」です。
それ以外の日はその場面によって吉凶の意味が逆転することもあります。
「友引」はその名の通りに友を引くという意味から結婚式などの祝い事には、その幸せのおすそ分けを連想できるので大安に次ぐ吉日とされています。
一方、葬儀に際しては「友を引く」ところから道連れを連想するとして火葬場も休業日とするところがあるほど不人気な凶日とされています。
「先勝」は先が勝ちというところから、午前中に行う事なら吉になるので、結婚式なら午前中の挙式にしたり、婚姻届けを出す日は午前中に届けるなどで吉日とされる方が多いです。
「先負」は「先勝」の真反対の意味なので、午後から行動を起こせば良いわけです。
ですが「負」という字から良いイメージにつながりにくく、吉日として扱われることは少ないようです。
「赤口」の意味は見当もつかない人が多いと思いますが、「赤」から連想される血や炎のイメージから出血につながる刃物や火元に注意する日とされています。
それらは死や凶事を連想させ、祝い事には「仏滅」よりいやがる人が多い日でもあります。
一方、「選日」の吉日としては「天赦日」を紹介いたしましたが、それに次いで挙げるとすれば「一粒万倍日(いちりゅうまんばいにち・いちりゅうまんばいび)」となります。
「一粒の種もみから育ちその幾万倍ものお米が取れる」そのような結果を招く日なので、何かを始めるにはとても良い日とされています。
結婚式ならこの幸せの門出を幸福の種として、もっともっと幸せが膨らんでいくととらえ、開業など何かを始める場合はその成果が大きく増えていくとの意味で、何事につけてもそれぞれに吉日とされています。
ただし、借金などはしてはいけない日とされています。
借りたお金が万倍にでもなったらなどと、考えただけでも恐ろしい話です。
あと、縁起の悪い「選日」としては「不成就日」の他にも「三隣亡(さんりんぼう)」というのがあります。
あなたの周りの特にご年配の方で「今日は三隣亡じゃないか。」などとつぶやいている人を見かけたことはありませんか?
「三隣亡」とはその字にあるように【「三」軒両「隣」までが燃えて「亡」くなってしまう】という意味で、絶対に引越しなどに使用してはいけない「選日」です。
そこから凶日と捉えられて何か悪いことがあったりした時に「仏滅じゃないか。」と同じ意味で「三隣亡じゃないか。」などと呟いてしまう人がいるわけです。
その他には
「三伏(さんぷく)」は夏の中でも暑さの厳しい時期で種まきにも適さない日とされており、結婚や旅行にも凶日とされているのは子種が育たないイメージからなのかもしれません。
「八専(はっせん)」は何をやってもうまくいかない日。
十干と十二支に五行を割り当てると、干支の気が重なる日が全部で12日あるのですが、詳しくは別の機会により詳しく。(1年に6回あり、雨の日が多いとい)
「十方暮(じっぽうぐれ)」は四方八方どころか十方全てが暮れて闇に覆われている意味で、色々なことがよくないこととなる日。
「天一天上(てんいちてんじょう)」は天一神という神様が天へと帰っている期間で、どの方角にも障りがなくなることで旅行や転居などには吉とされています。一方、家の中を汚していると祟りがあるそうです。
「犯土(ぼんど)」この期間は土公神(どこうじん)という土の神様が土の中にいるので土いじりにまつわる事、土木工事や種まきなどには忌むべき期間とされています。
(こちらに関しては、年に4回ある土用も同じく、土をいじってはいけないと言われております)
まとめ
「お日柄」や「歴注」に対しては年代や地域、業界などによっても受け止め方がそれぞれです。もちろんそれらを気にされる人も気にされない人もいらっしゃいます。
あなたがどちらの人であったとしても、それらは日本の文化として多くの人たちと共にあります。
特に結婚式の様な場面では、「お日柄」を考えることは自分たちの為であるとともに、自分たちを祝ってくださる方々に少しでも心地よい時間とする為の心配りでもあり、この日を大切にしていることの現れともなります。「お日柄」という些細に思えることも演出として大きな力があります。
その事をきっかけとして来賓の皆さんに「この良き日」の「良き期(氣)」に触れているのだなと感じていただければ、実際にその場もよい氣に満たされていくと私は思っています。
結婚式に限らず全てのTPOに合った「お日柄」を、その場の氣の演出として上手に活かし「喜び事はより大きく」「忌むべき事は少しでも軽く」としていだければ嬉しく思います。